そもそも設計図は必要か?
防音室を自作する上で、まず初めにすることは「設計図」の作成でしょう。
しかし、そもそも設計図なんて本当に必要なのでしょうか?
プロのように綺麗な設計図なんて書けないし、修正もどうせ発生するし。いらないのではないか?と考える方も多いと思います。
私は綺麗な設計図はいらないと思いますが、「事前に紙に書きながら考えることが重要だ」と思います。
プロのように綺麗な設計図を書く必要はありません。しかし、要はどんなものにするか?を事前にある程度想像しておくことが重要です。
また出来れば寸法はおさえておくべきです。
「大きさはこのくらいで、高さはこのくらい、素材はあれを使用して、そうだ、光を入れる窓みたいなものも作ろう!」といった類の概要レベルでも良いです。
今回のように素人が一人で作業する場合は、基本的には自分の頭に具体像があれば良く、綺麗な設計図は必要ありません。というか書けませんし。
しかし、下手でも良いので、一度紙に描きながら想像してみる、ということが非常に重要です。そうすると意外と考えないといけないことがたくさんあることに気付きます。考える、色々な点に気づく、という点で大切なのと同時に、作業中の道標になりますので、備忘録的なメモ代わりとしても「設計図らしきもの」を紙に書きだしておくことが大切だと思います。
壁は厚ければ良い、というモノでもない
事前段階で具体的に検討しておいた方が良いとは思いますが、具体的に検討すればする程、疑問も湧いてきます。
例えば「壁はどのくらいの厚さが適当か」というものです。
壁の厚さはイコール防音室の根幹に関わる部分ですので、これは悩みどころかと思います。
勿論、スペースに余裕があれば、壁は厚ければ厚い程良いのは言うまでもありません。
しかし、自宅に防音室を作ろうとする場合、防音室の中のスペースと、防音室を設置する部屋のスペースとの兼ね合いがあり、そう言うわけにもいきません。
下手をすると、何十pも部屋のスペースを侵食しかねないのです。
私は、最初「理想の材料を理想の順番で組み立てて、壁を厚くしよう!」などど考えて作業していたら、相当分厚くなることに気付き、部屋の侵食度合いが想像以上でしたので、途中考えを改めざるを得ませんでした。
では、薄くてもいいのか?というと、音漏れがしますので、当然そういうわけでもありません。
では、適当な厚さは?
実は、多くのサイトで紹介されているものを見ると、最低限の作成パターンがあり、その通りにやると、厚さはおよそ決まってきます。
大体7 〜 8p となるのではないでしょうか。
恐らく、これは自作防音室の世界で代々受け継がれてきた方法で、音漏れを防ぐという意味では、ある程度実証済みの作成パターンなのだと思います。
これが宅録派の防音室として耐えられる最低限の壁であり、逆にいうとこれ以上は無理して厚くする必要はないし、それ以下でも駄目なのではないかと思います。
以下、その作成パターンを設計図と共に説明します。またサイズの決定方法について説明したいと思います。
概要の設計(全体像を想像する) なぜ、縦:90p×横:120pが良いか?
私は設計図など書いたことがありませんので、何をどう書けば良いのか全く分かりませんでした。 但し、「仕上がりはこんな感じ」という全体像は頭の中になんとなくありました。一人で作業していたので、それで良かったのだと思います。
設計というと大げさですが、完成想定図みたいなものを、色々と自分でアイデア出したり、調べて分かったことなんかを、途中忘れてしまうこともありますので、ノートにどんどん書き留めていくと良いと思います。
<全体像>
これは、全体像をノートに落とした時の絵ですが、恥ずかしながら非常にざっくりしています。
なるべく作りはシンプルなものが良かったので、「出入口のためのドアが付いている箱」という感じです。
なぜ、縦:90p×横:120p×高さ:198p が良いか?
これは、録音用マイクを置き、その前にギターを持って、室内で対角線上と言いますか、斜めになるように椅子に座った場合、ちょうど全てが若干の余裕を持って入りきるスペースになるためです。高さについては、自分が立ってボーカル録音をする際に、圧迫感を覚えない程度にスペースを持つ、ということを考えての尺度となっています。
私の身長が185pとでかいので、この位は必要だと考えました。身長+12pです。
まあ、この高さについては後で失敗のもととなるのですが・・・。
唯一のオリジナルなアイデア:キャスター付きは良いアイデアだった
ウェブで調べていると皆さん、透明のアクリル板を取り入れることで光が入るようにしていたり、ドアの部分に空気が通るよう通気口を作っていたりなど、創意工夫されています。私も色々と悩みましたが、そんな余裕もなく、結局必要最低限に抑えていくことにしました。
但し、唯一工夫した点がありまして、底に小さな車輪をたくさんつけて、防音室自体を動かせるようにしたことです。
<底に取り付けた車輪>
これは参考にした事例の中でやってらっしゃる方は誰もいなかったと思います。通常「動かそう!」なんて思いませんもんね。
しかし、私の場合、将来必ず動かしたくなるだろうな、と考え車輪を付けたんです。
当面部屋の真ん中に防音室を鎮座させる予定でありましたが、将来これを窓際など、もっと端の方へ追いやりたいという欲求が必ず出るだろうと考えています。そんな中、一旦作ったら永遠にその場所、というのが少し融通性がなく危険な香りがしたため、いざとなれば解体せずに動かせるよう車輪を付けたわけです。
作業中、この車輪のお陰で狭い中、若干ではありますが効率的に作業を進めることもできたし、またこれにより、音の振動が床に伝わりにくい、という効果も狙っており、なかなか良いアイデアだったと思います。
縦・横・高さを決める
さて、寸法はと言いますと、私の場合以下3つの条件を満たすようなもので考えました。
1. 縦・横の寸法
⇒ 中で椅子に座ってギターを弾いた場合でも、スペースが足りること
2. 高さの寸法
⇒ 立ってボーカル録りした場合スペースが足りること
3. 外周の寸法
⇒ なるべく小さく。
最低でも防音室自体が部屋に収まって周りには歩けるスペースが十分確保できていること
因みに、この防音室を置こうとした部屋は、約5畳の部屋になります。
(235cm×350cm=8.2平米÷1.62=約5畳)
そこで書いたのが以下写真です。これは防音室を上から見た場合の寸法です。
<上から見た時の寸法>
上記3つのポイントを加味して、以下のように寸法を決めました。
【縦・横の寸法】
・内側が90cm×120cm
・外側が120cm×150cm
ギターを持って対角線上に座ればスペースが足ります。この当たりは作成に入る前に何度もギター片手に測りました。
壁の厚さは、この時まだ15cmで検討中。
修正前のものです。
これは、次のような作りを考えていたためです。
【壁の作り(計画)】
<外側から>
コンパネボード(合板)(1.2cm)
+遮音シート(0.1cm)
+石膏ボード(1.25cm)
+断熱材(ロックウール)(10cm)
+石膏ボード(1.25cm)
+コンパネボード(合板)(1.2cm)
<内側>
=15cm
すさまじく重厚な壁を当初想定します。但し、作成途中から、「正直こんなに頑丈な壁はいらない」と考え直して、だいぶ薄くしています。
理由は、
・自宅なのでそれ程遮音性を追求しなくても良い
・15cmって結構厚い
・何より重さが心配になった
というものです。
但し、ここがかなり悩みどころで、どれくらい壁を厚くすれば、どれくらいの遮音性・防音性があるのか?が感覚として全く分からなかったため、
「もし壁の厚さが薄すぎてせっかく作成したものの、音がダダ漏れだったらどうしよう?!」
なんていう思いと、
「あまり厚くし過ぎて重すぎたり、大きすぎたりしたらどうしよう、実はもっと軽い感じでも良いのでは?!」という思い、相反する2つの思いが常に交錯していました。
【壁の作り(外部サイト参考)】
そこで色々なサイトを参考にしてみると、
<外側から>
石膏ボード
+遮音シート
+ロックルールまたはグラスウール
+石膏ボード
<内側>
という作りのものが多く見受けられました。
基本ロックウールを石膏ボードで挟むだけで、プラス遮音シートを貼るだけです。
「なるほど〜。そこまで分厚くしなくても大丈夫そうかな。」
とまあ、色々考えましたが、結論からいうと、私の場合以下のようにしました。
【壁の作り(最終形)】
※赤文字は計画からの変更点
<外側>
べニア板(0.3cm)
+遮音シート(0.1cm)
+石膏ボード(1.25cm)
+断熱材(ロックウール)(5cm)
+石膏ボード(0.95cm)
+べニア板(0.3cm)
+カーペット(0.3cm)
<内側>
=8.2cm (計画からマイナス6.8cm)
だいぶ薄くなりました。
外側、内側ともに、べニア板を最後貼っていますが、本当は、私も石膏ボードむき出しで良いかな、と考えいたのですが、石膏ボードって表面が紙なので、何かぶつけるとすぐ破けてしまうんですね。私の場合、ギターや機材をすぐぶつけそうなので、石膏ボードの表面を守る意味でべニア板を上に張り付けたわけです。
このあたりは、壁を作るところで詳しくご紹介します。
結果的に外側の寸法はそのままですので、中のスペースが当初計画より広くなりました。
【高さ】
高さは
・内側198cm
・外側220cm
としています。
私の身長が185cm、床と天井の厚さが上記のように15cm×2=30cmで想定し、かつ、簡単に動かせるように車輪をつけようと考えていたので、これを5cm程度として、合計220cmとなり、ギリギリ天井にあたらない程度、ということで計算しました。
しかし、実はこの時点で重大な見落としがありました。なんと計画段階では「部屋の照明器具」を計算に入れ忘れていたので計画していた高さが確保できず、後戻りした経緯があるのです。
なかなか計画段階では想定だけで進めないといけないので、想像力と検討範囲の網羅性が重要となり、なかなか難しいところですね。