底が抜けてドーン!ってなるのか?
実は、既に防音室を作り始めていたのですが、組み立てていくと、意外にパーツ、パーツが重く感じたことがきっかけで、「防音室って結局何キロくらいになるんだろうか、床が抜けたりしないのだろうか」ということが気になりだしました。
<我が家の床の構造>
そこで、我が家の床の構造を確かめてみようと、床について書かれている書類を探し出し、確認してみました。
なになに?ふむふむ・・・。
よくわからない(苦笑)。
恐らくどうやら「防音二重床」というものらしい。
床下に「コンクリートスラブ」なるものがあり、そこから床を離すことで、防音効果を持たせているとのこと。
ここで少し安心したのが、「防音」という事もさる事ながら、床の下にコンクリートスラブなる「床」がもう一つあり、それがコンクリートで頑丈そうだ、ということです。つまり、最悪、床が抜けても下の階まで防音室が落ちてしまう、ということはなさそうかなと。
まあ、最近のマンションなら「床が抜けてドーン!」そんなことはないのでしょうが、一応確認できたので良かったです。
しかし、この床、何キロまでなら耐えられるのでしょうか?
そして、重い防音室を設置することに対してはどんな対策を施せば良いのでしょうか?
床の耐荷重は?
では実際何キロのものまで置いて良いのか?
それ以上置いたらどうなるのか?
床が何キロまでの重さなら耐えられるか?を示す指標が「耐荷重(たいかじゅう」というそうです。
書類には「耐荷重」の記載ありません。
<フローリング床積載について1>
しかし、近しいものとして「フローリング床積載について」なる書類にありました
何キロのものは大丈夫で何キロのものは駄目なのか、が具体例で書かれてあります。
<フローリング床積載について2>
また「『不可』を除き、沈みが発生しますが、破壊は起こりません」と書かれています。つまり、ちょっとくらいフローリング床が沈んでも大丈夫ですよ、というわけです。
しかし、一体何キロまでならOKなのかがよく分かりません。
色々と計算してみることに
何キロまでギリギリOKなのか知りたいので、具体例の記載の中で注目したのは以下4項目でした。
名称 | 重量 | 沈み量(補強無し) | 荷重寸法 | 設置可否 |
---|---|---|---|---|
グランドピアノ | 350kg | 3〜4mm | 局部3点 | 設置OK |
本棚 | 200kg | 約3mm | 300mm〜900mm | 設置OK |
水槽(大) | 600kg | 有害な変形(設置不可) | 700mm×1000mm | 不可 |
ウォーターベッド | 900kg | 有害な変形(設置不可) | 1200mm×1950mm | 不可 |
まずはリスト上、「設置OK」の中で一番重いグランドピアノ。
しかしグランドピアノは「局部3点で支える」前提、となっているため他と比較できません。
1点で全ての重さを支えるより平面で支える方が重さが分散されて、負荷がそれだけ軽減されるのです。
局部3点で支えるという想定は、あまり防音室の参考にはなりそうもありません。
そこで、次に重い本棚を見てみます。
これは、荷重寸法が平面面積で出ているので防音室の参考にできそうです。
設置不可なものとして、水槽(大)とウォーターベッドがあります。
この表から単純に見ると、
「350kgまではOKだが、600kgは駄目だ」と見えます。
それでは間を取って400〜500kg程度が限界値かな、と大よその当たりはつきそうです。
しかし、これでは私が自作する防音室は何キロであれば大丈夫なのか、がよく分からないので、分かりやすくするために、1u当たりで再計算してみます。
本棚:300mm×900mm=0.27u、200kg÷0.27u=740kg/u(設置OK)
水槽:700mm×1000mm=0.7u、600kg÷0.7u=857kg/u(設置不可)
ウォーターベッド:1200mm×1950mm=2.34u、900kg÷2.34u=384kg/u(設置不可)
平米740kg:OK
平米857kg:不可
なのに
平米384kg:不可???
ん? なぜだ?
740kg/uはOKだが、384kg/uは駄目?
ここまで見てみると、u当たりで計算してもあまり意味なさそうかな、ということが分かり取りやめたのですが、結局何キロまでなら大丈夫なのかが分かりません。
他に何かあてになるものはないものか?と思い探してみました。
建築基準法の観点から考える
何か参考になる情報はないかなと探していたら、どうやら建築基準法で耐荷重に関する定めがあるようだということを知りました。
【建築基準法施行令 第85条】
========================================================
(積載荷重)
第85条 建築物の各部の積載荷重は、当該建築物の実況に応じて計算しなければならない。ただし、次の表に掲げる室の床の積載荷重については、それぞれ同表の(い)、(ろ)又は(は)の欄に定める数値に床面積を乗じて計算することができる。
構造計算の対象室の種類 | (い) | (ろ) | (は) | ||
床の構造計算をする場合(単位1平方メートルにつきニュートン) | 大ばり、柱又は基礎の構造計算をする場合(単位 1平方メートルにつきニュートン) | 地震力を計算する場合(単位 1平方メートルにつきニュートン) | |||
(1) | 住宅の居室、住宅以外の建築物における寝室又は病室 | 1,800 | 1,300 | 600 |
========================================================
つまり、
「住宅の場合は、u当たり重さ1,800ニュートンまで耐えられるようにすること」
と書かれています。
ここでN(ニュートン)という単位が出てきています。また面倒くさい〜。
1N(ニュートン)って要は何キロ?
「N」とは重力の単位で、科学的に言うところの「重さ」のことだそうです。
厳密に言うと、「重さ1kg」とは言わず、「質量1kg、重さ(重量)1N」
という言い方をするんだとか。
(「N」の定義: 1キログラムの質量をもつ物体に1メートル毎秒毎秒 (m/s2) の加速度を生じさせる力、重量)
法令では厳密性を考慮して重さにNという単位を使っているのです。
(もう、何度も言いますが面倒臭いですね〜)
重さ(N)=質量(kg)×9.8(m/s2)
ですので、
質量1kgの場合、重さは9.8Nになります。
これを逆算すると
1/9.8kg =1N となります。
1÷9.8=0.102kg=1N
要は、
1N =102g
ということになります。
法令の表では、
1,800N とありますので、
1,800N×102g=183,600g
つまり、
「平米当たり183.6kgまでは耐えられなければならない」
ということになります。
床の耐荷重方程式
また、施行令には、
「床の積載荷重については、数値に床面積を乗じて計算することができる」
と書かれています。183.6kgは平米当たりですから、
ここから、
防音室自体の重さの限界=防音室の底の面積(u)×183.6kg
ということになります。
私の考えている防音室は、
1.2m×1.5m=1.8u
ですから、
1.8u×183.6kg=330kg
が建築基準法上の限界値ということになります。ふ〜。
で、330kgまでしかダメなの?大丈夫かな〜。
防音室の重さをざっくり計算してみよう
ここで自分の自作する防音室は何キロになるんだろう?ということが気になります。
想定する壁一面の重さ×6面
でざっくり計算します。
当初の計画で防音室を作っていくとすると合計何kgになるのでしょうか。
壁を以下のように作成しようと考えていましたから、ここから重さ計算してみましょう。
(分からない部分は想定で計算)
■計画段階での防音室の重さ
<外側から>
コンパネボード(合板)(1.2cm)
⇒14kg×2枚=28kg
+遮音シート(0.1cm)
⇒2kg/u×3u=6kg
+石膏ボード(1.25cm)
⇒14kg×2枚=28kg
+断熱材(ロックウール)(10cm)
⇒5kgと仮定
+石膏ボード(1.25cm)
⇒14kg×2枚=28kg
+コンパネボード(合板)(1.2cm)
⇒14kg×2枚=28kg
<内側>
合計:123kg×6面=738kg
ま、まずい!
かなり重くなり、許容範囲をだいぶ超えてしまう計算になります。
ここで紆余曲折あるのですが、もっと軽くしなければ、と考え壁の作りをもっと軽めにしたのです。
今度は修正したもので計算してみます。
■修正した防音室の重さ
<外側から>
べニア板(0.3cm)
⇒3kg×2枚=6kg
+遮音シート(0.1cm)
⇒2kg/u×3=6kg
+石膏ボード(1.25cm)
⇒14kg×2=28kg
+断熱材(ロックウール)(5cm)
⇒5kgと仮定
+石膏ボード(0.95cm)
⇒10kg×2枚=20kg
+べニア板(0.3cm)
⇒3kg×2枚=6kg
+カーペット(0.3cm)
⇒1kgと仮定
<内側>
合計:72kg×6面=432kg
おー、一気に許容範囲に収まってきました。
しかし、私と持ち込む機材(仮合計100kg)を加えると
532kg
となり、法令許容範囲330kgを大幅に超えてくるため、若干不安になります。
どうしよう・・・?
「面荷重」とする
もう少し、重さを軽減する策はないものか、と思案していましたら、フローリング床の積載についての書類に以下のように書かれてありました。
<フローリング床積載について3>
重い物の下に合板を敷いて、「面荷重として下さい」とあります。
つまり、重さを一点で受け止めるのではなく、合板を敷くことで面で受け止めるようにした方が良いですよ、と言うわけです。
ウェブで調べてみても、同様のことが書かれています。
<面荷重とするための合版>
そこで、
180cm×90cm、厚さ2cmの合版を2枚買ってきて床に敷くことにしました。
これで、耐荷重は、
1.8m×1.8m×183.6kg=595kg
(想定重量:532kg)
となり、私と機材含めた装重量が532kgでしたからなんとか耐えられそうです。
ふー、長い道のりでありました。
重さを考える際の4つのポイント
以上、まとめると、重さに関するポイントは以下4つになります。
■ポイント:
1.防音室のざっくりの総重量を計算する
2.床の耐荷重がわからない場合は、法令基準で計算してみる
3.法令基準の計算式は、「底面積(u)×183.6kg」
4.厚手の板を敷いて、面で重さを受ける面荷重とする
いかがですか?
重さに対してもきちんと計算して、大丈夫かどうかを確認しておきましょう!